ひなさんの小説以下の小ネタを放置するところ ↑旧 ↓新
俺には夢があったんだ。そんな大したものじゃない。ただ家族が幸せに暮らしていればよかった。そのために俺は生まれたんだって、それを次代に繋げて行くんだって、貴族の長男として当然のように思っていた。
それが崩された時、それまでの生活がどれだけ尊くて、大切で、無くしたくなかったものだったか気がついたんだ。
でも全部遅かった。俺にはそれを打開できる力はまだなくて、戦う力すらなかった。
それでも守りたいものがあって、どうすれば守れるかを必死に考えて、辿り着いた答えがこれだったんだ。
だから、俺の夢は全部捨てた。
守りたいものが守れるなら、俺の夢はいらない。
いや、それを守るのが俺の夢になったんだ。だから、力以外は何も望まない。富も名声も、愛も恋も夢も、帰る場所も、家の再興も、いまさら望んじゃいないさ。
――え、その俺の守るものが何かって? そんな大した話じゃぁない。妹さ。唯一残された妹だけは不自由なく、醜いものをこれ以上見ず、悲しみのない平和な世界で暮らしてほしい。それだけなんだ。
ただ、俺たちの生きていた世界では、貴族という名声や財力を失った能力のないお嬢様が生きていくには、少しばかり厳しすぎた。その血のせいで民衆派に象徴として担がれる可能性もあるから、普通には生きられない。ああ、俺は死亡扱いになっているし、家の名前は捨てたから大丈夫なんだがな。
話が逸れたな。とりあえず俺の目的はそれだけさ。それが叶うなら俺は泥水を啜って生きることになっても良かったんだ。
強くなろうと無茶を重ねて、身も心もボロボロになって、汗も血も流したし吐くほど修行もした。それくらいでないと凡人の俺は戦う力すら手に入れられなかったからな。
貴族の長男としてそれなりの教育は受けていたが、世界で生きていく為に知識もできる限り学んだ。あの頃は一分一秒無駄にせず、体を鍛え、寝る時間すら惜しんで机にも張り付いていたな。
まぁ、鍛えてもらった組織ではそれほど好成績ではなかったが、仕事ができる人材としては及第点ってところでな。職につく時、裏切らない事を条件に、なんとか家も没落寸前ながらに持ち直したってわけさ。
ん、仕事? まぁ潜入スパイまがいの事だったけど、生きるために必死だったし、色んなところを旅して周れるのは悪くなかったな。文献だけではやっぱりわからない事も多いし、人脈ってのもスパイには大切な要素だろ?
しかも情報を持ち帰るのが仕事だから、死なないための訓練だと思えば気も楽だったし、組織で勉学に励んでいたときよりは穏やか……な方が多かったんじゃないか?
危険な事に変わりはないけどね。捕まっても助けはこないし、国からは当然ながら尻尾切りされる。そこで終わりって事だ。自白してしまう前に死ね、なんてまぁよく言われてたさ。俺は諦めが悪いから、実は自害用の毒は仕込んでなかったんだけどね、ははっ。
今もこうやって普通にスパイしてるだろ? だからいいのさ。あの時代が、あれがあったから、今の俺がいる。死にかけた事もピンチもあったさ、でも人生なんてそんなもんだろ。
今も願うものは変わっていない。環境が変わったくらいで、寧ろ上司が変わって無茶振りは増えたが、やりやすくなったくらいさ。
俺が生きている限り、妹の無事は約束される。
いや、きっと俺が死んでもあの方は妹を守ってくれるだろうさ。ああ見えて意外と義理堅いんだ。
あの方は、俺という『絶対に裏切らない』諜報員を手に入れるかわりに、本国で後見人になって保護してくれている。まあ、あそこが一番安全だろうからな。
だから、俺にもう欲しいものはない。そうだな、一日の終わりに旨い飯と酒でも飲めて、綺麗なお姉さんとお話して……ってそんな顔するなよ。いいだろ別に。それ以上は望んじゃいないんだから。後はそうだな、柔らかい布団で安全に眠れたら御の字くらいだ。
妹が幸せで平穏な暮らしの中にいる。その庇護の対価に俺は戦う。
それだけで俺は幸せなんだ。これ以上幸せを望むとか、罰当たりってもんだろ。
だから、これでいいんだ。これで、いいんだ。
それが、俺が自分で決めた人生なんだ。
悪いな、誘ってくれたのに。
ん~? そうだな、その件は、いつか俺が衰えて来たら考える事にするよ。
2018年の春頃に書いていたらしいシエラ×ナッシュ。
シエラは一言も喋っていないけれど女攻めの左右固定です!
なんか出てきて、ふと読んでみたら悪くなかったので移しておきますネ。
女×男が固定になってる男右CPは腐向けに入るのか?
よくわかんないな……。
なお2005年にもシエナスが書いてあって、内容は似通っていた。
ずっと心の中にある妄想なんだろうな。
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