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FF11のプロマシアミッション名をお題に
思いつく限りルカササでSSを書いていた
意味も面白さもオチもないです。




(い)命の洗礼

「我が身、我が紋章、我が生命は母国に捧げております。乞われども、お渡しできません」
 掴んだ右腕をシーツの上で押さえつけて、上から睨む。
 真っ直ぐ見上げてくるまだ幼さが残る顔は、この状況下でも凛とこちらを睨んでいる。己は対等な存在であると、空気をもって語っている。
「ほう、ならば抗ってみせよ。欲しいものは奪うまで、だ」
 だから愉しいのだ。欲しい物が簡単に手に入る用ではつまらない。
「本当に強引な方だ」
「嫌いか?」
 少しの沈黙の後に、ふわりと微笑みが象られる。
「しょうがないですね。少しばかりの我が心ならば残っているのです」
「与えられるのは性に合わんのだがな」
「なら、いりませんか」
「いいや、貰ってやる。全てを捧げよ」
「……仰せのままに」
 それはまるで、雪の下から芽吹き出る青々とした新芽のように、薫りを運ぶ春風の如く、全てを洗い流す清流のようだった。


(ろ)楼閣の下に

「ハイランドは実に美しいですね。荘厳な作りとは、この事を指すのでしょう」
 繊細な装飾が多い祖国とは違い、この国の建築はずっしりとしている。
 土と石の重みと、それらを包む冷たい風。じんわりと蝕む冷気は何故か神聖さを纏っている。
「フン、ただの迷宮じみた牢獄だ」
 寒く、寂しく、悲しい大地だという印象なのだが、嫌いにはなれないでいた。
 寒く、美しく、繊細に輝く大地よりも、だ。草と土と、獣のかおりがする。
「牢獄にあのような風景はありませんよ」
 つと、中庭になっている庭園を見ると、そこには長い黒髪の皇女が静かに花を愛でていた。
「あの花も、どうせいつかは枯れる。綺麗なのはせいぜい今だけだ」
「花は枯れてもまた咲きます」
「燃やし尽くされてもか」
「燃えた大地にも、種は芽吹きます」
「そういうものか」
「ええ、全てを無に返せるものなどいないのです」
 掲げた右手が眩い光を放つ。光ったと思った瞬間、ふわりとあたたかい風が駆け抜けて、静かな光をたゆたえていただけの庭園が花いっぱいに咲き乱れた。春先でもこうはいかないほど見事だった。
 真なる土の紋章の力だ。土を愛する植物たちは、その声に呼応する。
「どうです。少しは安心されましたか?」
「ぬかせ。……定着せぬのなら同じことだ」

 遠い記憶の楼閣の下、懐かしい声音を思い出す。
 何もかも燃え尽きてしまった空の下、見目の変わらぬままの少年が佇む。

「ほら、また来たよ。君は覚えているかな」

 少年が右手を掲げると、人気のない廃城に緑が芽吹き、そして一斉に花が咲き乱れる。
 花を愛さなかった彼だが、これでせめてもの手向けになればいいと。


(は)母なる石

 あたたかい。その紋章に抱いたのはそんな感想だった。
 意外や意外、これまでそのような感情を持ったことはない。生まれながらにこの世は地獄で、怨嗟と慟哭にまみれていた。
 だが、それは太陽のように眩く照らすでもなく、不思議とあたたかなものを纏っていた。
 初めてそれを目にした時、安堵を感じたのだ。例え太陽が落ちようとも、この母は世界をあたため、厳しくも守り抜いて行くことだろう。
「もしや、惚れましたか」
「馬鹿を言うな」
「ですよね」
「俺には母の記憶があまりない。だが、欲したのなら必ず手に入れる。覚えていることだ」
「おやおや、それは困りました」
 すくい上げていた手の甲にキスを落とす。
 物騒な言葉とは反して、その空気は神聖だった。



(に)西への誘い

「僕はここより南に行ったことはありません」
 ハルモニアはハイランドよりも寒い。領土は広大だが、凍てついた海も多かった。南はハイランドに面しているし、東は海だ。
「ここから南には凍らぬ湖もあるぞ。更に南に行けばファレナと当たるがな」
「ふむ、今のファレナには手を出さない方が賢明でしょうね。真なる紋章が複数、根付いていると聞きました。王政が行き届いており盤石です」
「で、あれば。無難に西だろうな」
 トントン、と鎧の手がティントの先を叩く。そこから先は別の地図に置き換えねばならないのだろう。
「良いですね。温暖……を通り越して暑く乾いた土地もあるそうですが、見てみたいものです」
 珍しく目を輝かせる少年に、男は笑う。
「いずれ、見せてやろう」
「もしやそれは強引な方法なのではないですか」
「まぁ、俺の歩む後には焦土しかないだろうな」
「なるほど、そこで僕の出番というわけですね」


(ほ)忘却の町

 破壊の痕、燻る燃え尽きた街の匂いと、そこにまじる血と死の気配。思わず咽そうになるが、なんとか堪えた。
 これまでも、そのようなものを見たことがないわけではない。これからも、ゆっくりとこのような地獄に慣れていくのだろう。
 忘れてしまおう。一度だけ満開の花を咲かせて。
 祝詞を述べ、去った後に、花に包まれた町だけが残った。



(へ)隔たれし信仰

「神などいませんよ」
「神官の物言いとは思えんな」
「もしや、信じておられましたか」
「敬虔に信じていたなら、こんな道を選ぶと思うか」
「そうですよね」
 そう返す顔が、どこか寂しそうに見えたのは何故だろうか。本当は信じたくて、でも何かを知ってしまった。そのような顔だった。
「まだ貴様は若い。夢くらいは見せてやる」
 マントの端を持ち、覆うように視界を閉ざす。白く染まった視界に故郷を見たのか、やはり少し笑ったまま少年は呟いた。
「悪夢はご遠慮します」



(と)とこしえに響く歌
 生まれて初めて、本気で賛美歌を歌った。それは葬送という行為でもあり、鎮魂曲でもある。
 ただ、彼に神はいないと言ってしまった。嘘でもいると、云えば良かっただろうか。
「ごめんなさい」
 何度呟いても、彼は返らない。
 懺悔をしても、神が信じる者にしか手を差し伸べないのなら、彼も自分も、どこにも辿り着けないのではないかと。
 そう思って歌をうたったのだ。
 何処へ行くにしても、最後にこの声が届きますように。
 優しくない我々にも、等しく陽の光が届きますように。
 この空知らぬ雨は、止みそうになかった。





FF11のプロマシアミッション名のいろは歌が永遠に好きです。
たぶん今後も何度でも使う気でいます。

というわけで、ルカ✕ササライで順番に思いつく限り
タイトルをお題にしてSSで書いてみるなどしました。
見事に「いろはにほへと」で終わり、増えることもないんじゃないかなぁ……。

140字より増えたらいいねくらいのフランクさで書いてるので
それくらいの適当さで読んでいただければ幸いです。
私は書いてて楽しかっただけです。
マイナーすぎるCPって好き勝手捏造できるのがいいよね!!!
(もうちょっと考えて書いたほうがよくないですか?)

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