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◆ 白に舞うアイリス



「雪っていいよね」

「普通に厭だが?」

「あはっ、君らしいなぁ」

 人のいない公園で、寒いのに何故か二人きり。
 白い雪ですっかり染まった世界が、少しいつもと違って見えた。
 そんな中、年甲斐もなくはしゃいでいるヒュトロダエウスを、つまらなそうにしながらもベンチに腰掛けて待っているエメトセルクがいた。

「でも、雪が積もると綺麗じゃない。あれ、創造魔法じゃないんだよ。もっと古くからあって、でもカタチを変えないものなんだ。どんな世界も白く美しく平等に飾られるんだ」

 ほわほわと舞い散る雪の中、何が楽しいのかヒュトロダエウスは雪と踊って遊んでいる。小さな子ではあるまいに、と思いながらも、なんだかんだで目で追いかけてしまっている。
 そんなエメトセルクに気づいているのかいないのか、ふわりと髪を揺らせて振り向くと、白に溶け込みながらも花のように笑った。

「ね、すごいと思わない?」

 ああ、そうか。髪色が、ものすごく白と合うのだ。だからきっと、ずっと見ているのだ。

「見た目などどうでもいい。ひたすらに寒い、やってられん」

 心の声とは裏腹に、端的に感想を述べる。何を言おうが、さしてヒュトロダエウスのやることに変わりはないと思っているからだ。
 ひょこひょこと雪を踏みしめ、男はやっと目の前に帰ってきた。

「それが情緒というものさ」

 そう言って、冷えた手を頬にぴたりとくっつけてくる。とうぜん、とても冷たい。

「こら、やめろ。情緒が死ぬ」

「えー、温めてよ」

 けらけらとヒュトロダエウスが笑う。ちょっとした悪戯だったのだろう。こういう事を無神経に平気でやるから腹が立つ。
 言われた通りその手を掴むと、やや強引に手の甲に口付けた。

「うわぁ」

 思わず動きを止めた彼に、にやりと笑む。分かりやすいところは好ましい。

「……まだ冷えるか?」

「も、もう充分かも」

 不意打ちが成功して、寒さは変わらないが気分は良い。

「君ってさ、わりとキザだよねぇ」

「厭ならそう言うといい」

「イヤじゃないけど、心臓にはちょっと悪いかな」

 お前の性格も大概で、どの口が……と思わなくもないが、釣り合うという意味では丁度いいのかもしれない。

「やっぱり、雪は寒いね。もう帰ろうか、エメトセルク」

 その声を聞いて腰を上げながら嫌味を言う。

「引き止められていたのは私なのだがな」

「付き合ってくれてアリガト」

 ぴったりと横に寄り添うように、雪の中を並んで歩く。隣で揺れる紫色が白に映えて、もう少し雪が積もれば良いと思った。





Twitterにて、クリスマスまでに募集したエメヒュ作品を1つずつ上げていくという
素敵企画を見て、匿名OKだし私も書こう~!!!と思ってさわりを書き
そのまま忘れてクリスマス後に思い出した奴です。
短いのでも140字でもいいとのことだったので、ちょっとそれに毛が生えた程度ですが……

雪の白にヒュっくんの淡い紫色は映えるだろうなぁ
と思って書いたはいいけど、能力が追いついてない感じがしますね(笑)
マイナーだとは思ってたけど反応はほぼなかったので、ここでそっと供養しておきます。

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