ひなさんの小説以下の小ネタを放置するところ ↑旧 ↓新
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カルデアに来てから、日々が慌ただしく過ぎていく。今日も種火を集めるらしく、テセウスも腕を引かれて見学に行った。
場に慣れたサーヴァント達がすぐに敵を蹴散らしてしまうので、後衛に控えていたテセウスはマスターを守っているくらいしかやることがないのだが、サーヴァント達の戦闘を見ているだけでためになるし、何となくそれでもマスターとより繋がれる気がして嬉しかった。こんな日々も悪くはない。
今日の種火はテセウスのものらしい。流石に何も貢献できていないので申し訳ないと断ったが、みんなこうしているのだと、これでテセウスが強くなって、また新しく入るサーヴァントの為に力を貸してほしいと諭されて仕方なく受け取った。
そうして、最終再臨の時が来たのだ。再臨すると大きく形や大きさが変わることもあるらしく、専用の部屋はかなり広い。そんな中で渡されたのは金色の模型と、銀色の冠、そして虹色に光る玉糸だ。
「少し緊張するね。僕の人生は後になればなるほど輝かしくなかったから、かっこ悪くなったりしないかな」
「あはは、ここまで辿り着いたみんな、必ずかっこよくなるから大丈夫だよ。きっと素敵になる」
「そうだと良いんだけど」
じゃあやるね、とマスターが告げて手をかざすと、力が溢れ、全身にみなぎってくる。素材が光り、形を替え、玉糸は赤みを帯びて左手に。銀の冠は糸になり、編み込まれて外套に姿を替えていく。そしていっとう輝きを放つ、腕のガントレットには……。
「わあ、大変なものが出てきてしまった。悪いけど、これは使えないな。本人の了承を得ないと、僕が使うにはあまりにも……」
大きな二つの角を模した飾りが腕に輝いている。それは誰が見ても明らかに……そう、借り物だ。
そこで機をはかったかのように、扉が開いた。脳裏に描いていた人物が飛び出してきて息が止まる。
「てせうす~!!!」
「アステリオス、どうしてここに?」
「さいごのさいりんするってきいた、おめでとう! これ」
巨体のわりにアステリオスは俊敏だ。たちまちに側に来て、ずいと何かを両手で突き出す。それは優しい色合いの花で作られた冠だった。
アステリオスに花、一見まったく相容れなさそうなのに、どうしてかそれらしくて、花畑にでもいたのかとテセウスは顔を綻ばせる。
「うん? 綺麗な花冠だね、エウリュアレ様にかな」
「ううん、てせうすに……はい!!!」
アステリオスは迷うことなく、テセウスの頭にぽん、と花冠が被せる。
「ええ……? ぼ、僕に? 流石に僕みたいな厳つい男には似合わないんじゃないかな?」
「そんなことないよ、とても似合ってる」
隣のマスターが笑顔でそう答えてくれる。筋肉に花、やはり……似合うのはアステリオスみたいな無邪気でかわいい人だと思う。
「ぼく、あまりうまくないけど……いっぱいならって、れんしゅう、した」
「そう、なんだ」
「きみに、あげたくて」
そう言われて胸の音が跳ねる。恥ずかしいやら、嬉しいやらで、思わず横を向いてはにかむ。
「うーん。これは、ちょっと照れるな。でもせっかくだから貰っておこうか。ありがとう、アステリオス」
「かれたら……またいつでも、つくってあげる」
自分の作った花冠がテセウスを飾っている事に満足したらしい。アステリオスはご機嫌そうににこにこしている。
「そうだ、アステリオス。このガントレットについてしまった飾りなのだけれど」
「うん? ……あ、ぼくの!!!」
「ごめん、ごめんね。気づいたら付いてしまっていて。僕が使っていいものじゃないし、すぐに元に戻そうと思っている」
「なんで? おそろいなのに」
心底不思議そうな顔をするアステリオスに困惑する。
「君は嫌ではないのかな?」
「このうでのやつ……てせうす、まもるもの、だよね」
「そうだよ。このガントレットは、攻撃を受ける時に身を守るためのものだね」
だから尚更だ。大切にしたい相手の、否定したかった怪物の部分を借りるなんて、あまりにも身勝手で相応しくなさすぎる。無意識に近づきたい心理でも出てしまったのだろうか。そんな感情で傷つけていいわけがないのだ。
「じゃぁ、ぼく、それがいい!」
「え、でも」
「ぼく、てせうすまもる、たてになれたら……いっぱいうれしい!」
にこりと笑みを向けられて、テセウスが反応に困る。なんて輝かしいんだろうか。アステリオスが怪物だなんて、本当に、絶対に、嘘だ。
「わかった。なら貸してもらう事にするよ」
「うん、そうして!」
花の冠に、腕の角に、満たされてしまう心に、なんでもかんでも、ここに来てからアステリオスに貰ってばかりだ。本当は与えたいのに、あれだけしぶとく生きておきながら何も持ち合わせていないなんて。せめて、いつかアステリオスが喜ぶようなものを返せたら良いのに。
既に霊基の登録の準備をしていたマスターに声をかける。
「ねえマスター、登録してもらったばかりで悪いのだけれど、今ならこれも一緒にしておけるかな」
頭の花冠を指し示す。ふと顔を上げたマスターは、口を挟まず隣で聞き耳を立てていたらしく、朗らかに笑ってくれた。
「オッケー、いいよ。この姿で登録しておくね」
こうしておけば、もしかしたら枯れないかもしれない。そして、ここにいる限り、この縁がずっと続いてくれるかもしれない。退去する日がくるまで、許される限り傍にいよう。
そして、今度こそ、差し出せるものは、全て差し出してみせるのだ。
習作みたいな感じで書いたっぽい最終再臨アステセ話!
テセウスは背も高いし筋肉むきむきなのに
アステリオスを隣に置くだけで小さく見えるし可憐なイメージになるの面白いよね。
やっぱり頭の花冠がファンシーなんじゃないかなって思う。
いいよ、似合ってるよ……。
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