ひなさんの小説以下の小ネタを放置するところ ↑旧 ↓新
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※相当昔に書いて中途半端に放置してあったものサルベージです。
はぁはぁと荒い息が、静かな夜のコートにあった。
「やるじゃないか、仁王」
流れる汗をリストバンドで拭って、片方の少年は楽しそうに笑う。
先ほどまで激しいインパクト音が飛び交い、白熱したバトルが繰り広げられていたのだ。
観客は誰もいない。みんなが帰り静まりかえったコートに涼しい風が流れ込む。
「何や、結局これでも……おまいさん勝つことは……できんのか」
汗だくながら凛々しく立つその少年とは逆に、仁王と呼ばれた少年は立つ事すら敵わず、対面のコートで膝を折って荒く息をついていた。
「真田の風林火山……お前のイリュージョンは完璧に近いよ。この俺すらも騙すことができる」
「でも勝てん」
本当に、鬼のように強い。普段は穏やかにチームを見守る眼差しも、コートに入れば面影すら消える。
「当然だ。何故なら、俺は既に風林火山を破っている」
「……チッ」
『実は真田は幸村に勝った事がある』というのは、レギュラーの間では有名な話だ。ただ常に勝てるというものではなく、勝算は幸村が圧倒的に高いのだと、事実を知る柳が言っていた。だから真田をマネて更に意表を突ければ、幸村を倒す勝算はあると考えたのだが、どうやら甘かったらしい。追い込めたと思ったのに、あっさりと抜かれてしまった。
あいつも使えん男やのう、と心でごちる。
「ふふ、でも強くなったな仁王」
「負けたがの」
「俺をここまで追い込んだ実力は認めざるをえないよ、よくやった」
白いライトに照らされながら悠然と近づいてくる幸村が眩しくて、仁王は目を細める。恐ろしいほどまでに強く、そして美しい。いつかそれを触りたい。手に入れることは不可能でも、手に届く範囲にならば……。
「やったら、キスくらいまでは許してくれてもいいじゃろ?」
一瞬、話が見えなかったのか、幸村がきょとんと無防備な顔を晒した。
「……え? ああ、その話か」
幸村に好きだと告げて一年、隣には置いてくれるし、手も繋がせてくれるし、抱きしめさせてもくれる。
しかし、その先の行為は全く許して貰えないのだ。
許しの条件は『俺より強くなること』。無理矢理奪ってしまえばと冗談で迫ったこともあったが、幸村の本気の凄みほど怖いものはなかったので、やめた。それより一泡吹かせて、正面から騙してやろうと誓ったのだ。
そして、今日というこの夜、真田の技を模して挑んだのだ。誰にも見せたことが無い、この模倣の技は、彼が倒れてから一層努力して、あの手塚でさえもマネできる。
勝つ自信は多少はあった。手汚いとは思うが、幸村には半年以上の長いブランクがあったからだ。しかし勝てなかった。
が、3ゲームは取って、息は切らせた。これまでそれすらも敵わなかったのだ。
幸村は困ったように頬を掻いて、少しだけ考え込むと、やがて一つ頷いた。
「そうだな……長い間、待たせたし…じゃぁ一回だけならいいよ」
真剣試合をしたばかりで足も動かないはずなのに、仁王は素早く幸村の腕を引っつかむと勢いよく引き寄せる。
「うわっ」
驚く声をそのままに腕を抱きこむと、何事かと顔を上げた幸村に激しくキスをした。
「ん…ッ!」
『俺よりも強くなること』という不可能に近い条件のために、幸村にとって未知の世界であるその行為は、彼から一瞬だけ判断力というものを奪い去っていた。間髪入れずに進入してきた舌が口内を犯して、更に思考力すらも無くしそうになる。それが怖くて、思わず幸村は目を強く瞑った。すると、より口の中を這い回る舌がリアルに感じられて、震えが走るのが分かる。
珍しく焦ってしまっている自分と、ゾクリと背中を駆け巡るナニかに驚いて、幸村は渾身の力を込めて仁王を押し放した。一回だけならいいと言った、そこに二言はないが、いきなりとは聞いていない。
「っ!」
「も、いい……だろ」
整わない息の中で、バクバクと心臓が跳ねている。この動悸は、さっきまでテニスをしていたからではない。
急に恥ずかしくなって、幸村は腕で口を拭った。
「一回しか許して貰えてないきに、それはひどいぜよ」
「ひどくない、いきなりするお前が悪い」
慌ててラケットを拾うと、背を向けて歩き出す。まずい、顔が火照ってる気がする。さっさと暗いところに逃げてしまえば気づかれないだろうと、彼は仁王を残してコートを出る。
「ちょ、幸村、待ちんしゃい」
「お前が負けたんだ。後は頼むぞ」
静止の声がかかるが、無視することに決めたので振り返りさえしない。
真田の風林火山陰雷を仁王が覚えてしまったら、もしかして更にヤバくなるんじゃないだろうか?その先は想像するのが怖い。
夏の涼しい、気持ちいいはずの夜風が、不気味に頬を撫でていった。
俗に言うご褒美ってやつですね。
大昔に書いたにおゆきがあったのでサルベージしてみました。
正直「私こんなの書いてたんだ?」レベルです……。
過去の私はさっすが過去の私!話の練りが甘いぞーー!!!
と思うけど、別に最近の私の話の練りがしっかりしているわけでもなかった。
あとオチがついているようで迷子だった。何が書きたかった???
でもまあ、誰か読みたい人いるかもしれないしいっか……
はぁはぁと荒い息が、静かな夜のコートにあった。
「やるじゃないか、仁王」
流れる汗をリストバンドで拭って、片方の少年は楽しそうに笑う。
先ほどまで激しいインパクト音が飛び交い、白熱したバトルが繰り広げられていたのだ。
観客は誰もいない。みんなが帰り静まりかえったコートに涼しい風が流れ込む。
「何や、結局これでも……おまいさん勝つことは……できんのか」
汗だくながら凛々しく立つその少年とは逆に、仁王と呼ばれた少年は立つ事すら敵わず、対面のコートで膝を折って荒く息をついていた。
「真田の風林火山……お前のイリュージョンは完璧に近いよ。この俺すらも騙すことができる」
「でも勝てん」
本当に、鬼のように強い。普段は穏やかにチームを見守る眼差しも、コートに入れば面影すら消える。
「当然だ。何故なら、俺は既に風林火山を破っている」
「……チッ」
『実は真田は幸村に勝った事がある』というのは、レギュラーの間では有名な話だ。ただ常に勝てるというものではなく、勝算は幸村が圧倒的に高いのだと、事実を知る柳が言っていた。だから真田をマネて更に意表を突ければ、幸村を倒す勝算はあると考えたのだが、どうやら甘かったらしい。追い込めたと思ったのに、あっさりと抜かれてしまった。
あいつも使えん男やのう、と心でごちる。
「ふふ、でも強くなったな仁王」
「負けたがの」
「俺をここまで追い込んだ実力は認めざるをえないよ、よくやった」
白いライトに照らされながら悠然と近づいてくる幸村が眩しくて、仁王は目を細める。恐ろしいほどまでに強く、そして美しい。いつかそれを触りたい。手に入れることは不可能でも、手に届く範囲にならば……。
「やったら、キスくらいまでは許してくれてもいいじゃろ?」
一瞬、話が見えなかったのか、幸村がきょとんと無防備な顔を晒した。
「……え? ああ、その話か」
幸村に好きだと告げて一年、隣には置いてくれるし、手も繋がせてくれるし、抱きしめさせてもくれる。
しかし、その先の行為は全く許して貰えないのだ。
許しの条件は『俺より強くなること』。無理矢理奪ってしまえばと冗談で迫ったこともあったが、幸村の本気の凄みほど怖いものはなかったので、やめた。それより一泡吹かせて、正面から騙してやろうと誓ったのだ。
そして、今日というこの夜、真田の技を模して挑んだのだ。誰にも見せたことが無い、この模倣の技は、彼が倒れてから一層努力して、あの手塚でさえもマネできる。
勝つ自信は多少はあった。手汚いとは思うが、幸村には半年以上の長いブランクがあったからだ。しかし勝てなかった。
が、3ゲームは取って、息は切らせた。これまでそれすらも敵わなかったのだ。
幸村は困ったように頬を掻いて、少しだけ考え込むと、やがて一つ頷いた。
「そうだな……長い間、待たせたし…じゃぁ一回だけならいいよ」
真剣試合をしたばかりで足も動かないはずなのに、仁王は素早く幸村の腕を引っつかむと勢いよく引き寄せる。
「うわっ」
驚く声をそのままに腕を抱きこむと、何事かと顔を上げた幸村に激しくキスをした。
「ん…ッ!」
『俺よりも強くなること』という不可能に近い条件のために、幸村にとって未知の世界であるその行為は、彼から一瞬だけ判断力というものを奪い去っていた。間髪入れずに進入してきた舌が口内を犯して、更に思考力すらも無くしそうになる。それが怖くて、思わず幸村は目を強く瞑った。すると、より口の中を這い回る舌がリアルに感じられて、震えが走るのが分かる。
珍しく焦ってしまっている自分と、ゾクリと背中を駆け巡るナニかに驚いて、幸村は渾身の力を込めて仁王を押し放した。一回だけならいいと言った、そこに二言はないが、いきなりとは聞いていない。
「っ!」
「も、いい……だろ」
整わない息の中で、バクバクと心臓が跳ねている。この動悸は、さっきまでテニスをしていたからではない。
急に恥ずかしくなって、幸村は腕で口を拭った。
「一回しか許して貰えてないきに、それはひどいぜよ」
「ひどくない、いきなりするお前が悪い」
慌ててラケットを拾うと、背を向けて歩き出す。まずい、顔が火照ってる気がする。さっさと暗いところに逃げてしまえば気づかれないだろうと、彼は仁王を残してコートを出る。
「ちょ、幸村、待ちんしゃい」
「お前が負けたんだ。後は頼むぞ」
静止の声がかかるが、無視することに決めたので振り返りさえしない。
真田の風林火山陰雷を仁王が覚えてしまったら、もしかして更にヤバくなるんじゃないだろうか?その先は想像するのが怖い。
夏の涼しい、気持ちいいはずの夜風が、不気味に頬を撫でていった。
俗に言うご褒美ってやつですね。
大昔に書いたにおゆきがあったのでサルベージしてみました。
正直「私こんなの書いてたんだ?」レベルです……。
過去の私はさっすが過去の私!話の練りが甘いぞーー!!!
と思うけど、別に最近の私の話の練りがしっかりしているわけでもなかった。
あとオチがついているようで迷子だった。何が書きたかった???
でもまあ、誰か読みたい人いるかもしれないしいっか……
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